ミニ石油ショック、輸入国の日本に10兆円の増税効果

―本記事は情報拡散を目的に作成しています。ご紹介している文書は、各情報サイトおよび各企業様のホームページ等から引用させていただいています―


原油価格が7年ぶりの高値を付け、日本経済の大きな「重し」となってきた。前年同期と比べ約2倍の高値が続けば、円安の進行と合わせて輸入国・日本にとって約10兆円の増税に匹敵する負担増となる。企業には大きな減益要因であり、製品値上げに波及すれば個人の購買力低下要因にもなる。「ミニ石油ショック」となる可能性も出てきたと言える。


<エネルギー輸入急増は富の流出>


原油価格の上昇は、このところ急ピッチで進んでいる。20日のニューヨーク市場で米WTI原油先物は一時、7年ぶりの高値となる84ドル台に上昇。21日も83ドル台で推移し、ガソリン価格は1リットル=164.6円(18日時点、石油情報センター調べ)と7年ぶりの高値を記録している。1年前の原油価格は38ドル近辺で推移していたので、2倍に跳ね上がったことになる。


原油はほぼ100%輸入に頼っており、値上がり分の「富」は全額海外に流出することになる。日本における2020年分鉱物性燃料の輸入額は11兆2549億円だった。このうち原油が4兆6564億円、液化天然ガス(LNG)が3兆2089億円を占める。LNGも足元でスポット価格が前年同月比で10倍に高騰しており、長期契約が多い日本企業にとっても、先行きのコスト急増は不可避だ。


仮に原油や天然ガスの値上り状況が1年間続くとすると、鉱物性燃料の輸入額は20年と比べて2倍程度に膨らむ公算が大きく、概算で10兆円超が日本全体で負担するコスト増となる。


これは、企業や消費者にとって増税と同じ新たな需要の押し下げ効果を持つ。税金であれば、政府がその原資で国内に投資することが可能だが、全額が産油国への富の移転となり、日本にとっては「まる損」ということになる。


<企業と個人の両方に打撃>


日本企業にとっても10─12月期から急速にエネルギーコストが増加し、年明け後に業績予想を引き下げる企業が続出する可能性がある。特にドル建ての比重が大きいエネルギー関連の輸入が大きい企業は、最近の円安傾向も加わって相当な負担増になるはずだ。また、最終消費財を販売している業種では、各種のパッケージ用容器や包装用の素材が概ね原油由来の材料でできているため、いずれ値上げを余儀なくされるだろう。


ガソリン代の値上げ分をどこかで節約しようとしている消費者にとっては、だんだん「逃げ道」が狭くなる状況になりそうだ。円安と原油高で個人消費がかなり落ち込むとの試算が複数のエコノミストから出ており、個人消費の先行きにもかなりの不透明感が出てきた。政府・日銀は、これまで好調だった外需に加え、新型コロナウイルスの感染下火による消費の回復を期待して、年度後半には成長率が押し上げられる「軌跡」を描いてきた。だが、実際には原油高と円安による企業と個人の両部門の失速で、2022年は冒頭から停滞感の強い展開になる可能性が高まってきた。


<力不足の政府対応>


岸田文雄首相は18日、原油価格の上昇への対応を検討するため、経済再生担当、経産、農水、国土交通と官房長官の5閣僚に対し、原油市場の動向、国内産業、国民生活への影響をまず注視し、影響を受ける関係業界に対して必要な対応を機動的に実施していくよう指示した。また、国際エネルギー機関(IEA)などと連携し、主要な産油国へ増産の働き掛けを行っていく方針を示した。しかし、主要な産油国から目立った反応が今のところなく、影響を受ける業界からのヒアリングや相談窓口の設置などに対応がとどまっており、政府としての骨太なエネルギー対策は示されていない。


<経済対策の主力はエネルギー対策に>


すでにコロナ対応による各種の行動規制で、対面型サービスだけでなく、流通部門や最も上流の農業・水産業など協力金の支給対象外だった産業では、事業の継続が危ぶまれるところが続出している。そこに原油急騰によるコストの追加負担が加われば、地方経済を支えてきた観光、農林、水産業者などは経営が立ち行かないケースが急増しかねない。


衆院選後に策定が予想される2021年度補正予算案を中心とした経済対策では、これまで想定されてきたコロナ対応主体のメニューではなく、原油高の影響を受ける分野の支援を主体にした政策構成に変更する必要があると指摘したい。


今のところ、東京市場は今回の原油値上げの影響を軽く見ている節があるが、「ミニ石油ショック」が第3次石油ショックに発展したとしても、バタバタと慌てふためく「失態」を招かないよう政府の迅速で適切な政策対応を望みたい。



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